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春の宵

親父が板前の大将で、お袋が女将をやっていた。
二人とも雇われ。
会社の社員食堂で働いている料理人とかいるじゃない? そういうイメージ。 会社に雇われて、他の従業員まとめて働く。 それが、社員食堂じゃなくて、大きな料亭だった。

大きな店だった。 敷地が3,000坪あって、僕の家族は住み込み。 豪邸に住んでいるお金持ちみたいなイメージで見られることもあったけど、まぁ、単なる管理人家族ってだけ。

部屋も、60畳位ある大広間から8畳くらいの小さな部屋まであって、20室近く。 ピークには1日2~300人くらいのお客さんが来て、飲んで食べて、騒いで帰っていった。

当然、板前の人も何人もいて、仲居さんも何人もいた。

兄貴はあまり寄り付かなかったけど、僕は厨房が好きで、いつも覗きに行っていた。 忙しいときには洗い終わった皿を片付けたり、御銚子にお酒を入れたりして、子供ながらにちょこまかと手伝っていた。


仲居さんたちは、僕のことを「こうちゃん」と言って可愛がってくれた。 みんな、そのころから「○○のおばちゃん」と呼んでいた様な、お袋と同じか少し年上くらいの人たちだった。


昨日の夜、今日の未明の頃、そのうちの一人のおばちゃんが亡くなった。 癌。

親父とお袋が定年退職して、独立して店を構えたときにもついてきた人だ。 まぁ、年齢が年齢だったこともあるし、何か出来るわけでもなかったろうし、それでも低い時給で働いてくれていた。 うちにいた仲居さんたちの中でも一番に馴染みのある人だった。


何年か前に癌が見つかった。 タバコが好きで、お酒も飲む人で。 もともと痩せていて小柄な人だったけど、帰省したときに見たらさらに小さくなっていた。
お袋からは、「もう、長くは無理みたいね」って言われてた。

おばちゃんと最後に話したときも、「元気にならんといけんよ、おばちゃん。 また帰ってくるけね、元気しときよ。」って言って別れた。 たしか、車で病院に送って行った時、車からおばちゃんが降りたときが最後だ。

通夜も葬式もいけないけど、おばちゃん、ありがとうね。 お疲れ様ね。 ありがとうね、おばちゃん。

2 Comments

uky  

いや、もう死んじゃってるんで、
見守られるのも怖いちゃ怖いことなんだけど・・v-39

2007/05/24 (Thu) 16:42 | REPLY |   

yu  

もう一度会いたかったね。
残念だったね。
うっきいのその気持ち、きっと届くと思います。

おばちゃん、どうかうっきいを見守っていてくださいね。

2007/05/23 (Wed) 17:03 | EDIT | REPLY |   

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