月命日 2016年7月5日

親父の料理が少しずつ薄れてきている。
いろんなものを作ってくれたのに。

カレー、ちゃんと作ってくれたやつっておいしかったな。　いい加減に作ったのでも十分おいしかったけど、格段に違ってた。

ババロア、プリン。　そういったデザートもいそいそと作ってたな。　プリンは今でもあんな味を探してるけど、出会えない。

グラタンもおいしかった。　大きな鍋で小麦粉から作るのを見ていて、何が出来上がるんだろう？っていつも見ていたな。

カレーコロッケ。　もう二度と食べられないと思うと残念で仕方ない。　兄貴がちゃんと受け継いでいてくれればまだ救われたものを･･･変に自分流にアレンジなんかしてるから。。。


昔。
うちの親父は北九州の、そこそこ大きな料亭の板場の長をやっていて
その店はとてもとても繁盛していた。
忘年会のシーズンなどは、多分、200人以上を一晩にまかなっていたんじゃないかな、って思う。
六十畳の座敷、二十畳くらいの部屋がふたつ三つ、8人程度入る部屋とか、小さな個室とか･･･とにかく大きな店にたくさんの人が集まって、呑んで食べて。　そこで板場を仕切ってやってた。
親父の料理はたくさんの人の口へと運ばれ、お酒とともにみんなの笑顔を作っていた。

ボクは、そういったお客さんに出す料理も食べさせてもらったが
親父がそのときについでに作ってくれる簡単な料理が好きで、楽しみにしていた。

親父の味はボクのなかでは少しずつ薄れ始めた。
残念だけど、お客さんたちの中ではもう消えてしまったかもしれないね。


最近、自分の顔が親父に少し似てきたような気がする。
今日は月命日。



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