さよなら チコちゃん



通勤ルートにある、小料理屋に犬がいた。
チコちゃん。10年以上の付き合い。
その昔、毎朝小さなベンチにおばあちゃんが座っていて
チコちゃんはその横を、おばあちゃんのペースに合わせるようなゆっくりした動きで動いていた。
時々、散歩をしてた。
いつの頃からか、そのおばあちゃんの姿が見えなくなった。
齢を考えると、きっと寝たきりになったのか、亡くなったんだろうな、と思っていた。
チコちゃんは犬小屋にいて、いつもより少し動かなくなったような印象を受けていた。
それから5年くらい過ぎたかな。
チコちゃんの犬小屋がなくなった。
おそらくおじいちゃんが、「犬小屋はどかしましたが、チコは元気です」と貼り紙を貼っていた。
お店をやっているという都合もあってか、近所の人からも意識を集めていたんだろう。そんな人気者の犬が、少し人目から遠ざかった。
最近は、おじいちゃんと散歩に出るときも大変そうだった。
台車の上に透明のプラケースを載せて、そこに毛布を敷き。
プラケースの中にいるチコちゃんは体に力がなく、プラケースにもたれかかった重力のままにいた。
隅のほうに追いこめられていたり
縁から出した状態がだらしなく垂れ下がっていたり。
正直、見ていて痛々しかった。
それでも、おじいちゃんは風に当てよう、日に当てようとしているのか、お散歩に連れだしていた。
今朝。
その小料理屋の店先に、また小さな貼り紙が張られていた。
チコは7月29日に永眠ししました。
ちいさな貼り紙で、短い言葉で。
チコちゃんの永かった生涯が終わったことを知った。
おばあちゃんといることから成犬だったし、きっと生涯を全うしたんだろう。
きっと、どこかでおばあちゃんの想いとつながったんだろう。
おじいちゃんに大事にされた感謝を大切にもっていったんだろう。
僕も。
チコちゃんの安らかな眠りを祈ります。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆

ポチっとクリックしてください

